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脊髄損傷の車椅子建築士が伝える「バリアフリー住宅の実情」⑤ ~トイレ編2~

 

 

 


まずはトイレの高さから見て行きましょう。

便器の高さはメーカー各社色々とありますが、流通されている大手メーカーでは、床から便器の高さは①350mm ②370mm が主となりますが、一般的に出廻っているサイズの便器は②370mmとなります。

次に便座ですが、一般的にウォシュレットが普及していますが、その高さは39mmとなります。よって、一般的にトイレの高さは床から便座の上端まで、370mm+39mm=409mmとなります。

この高さは日本人の体形に合わせた高さとなります。皆さんが良く使用する椅子の高さも工学的に390mm~430mmに造られているのが現状です。故に座って立ち上がる一連の動作が楽になる高さがこの範囲の高さとなります。

皆さんのご自宅の椅子やトイレの高さを測ってみては如何でしょう。しかし、立ち上がりの楽になるこの高さは立位の取れる方対象となります。

では次に車椅子の高さはどの様になっているのでしょうか。

車椅子は自走用・介助用・電動式等と様々な種類があります。一般的に車椅子からトイレに移乗(以下トランス)の動作を考えると自走用車椅子・介助用車椅子となります。自走用車椅子はモジュラー型とオーダーメイドと大きく分かれます。座面高も床から①430mm ②440mm ③450mmとなり、一般的に③450mmが主流となっています。

次に足を置くフットレストの高さですが、床から50mm以上となっています。故に座りの部分はフットレストから400mmとなりますので、通常の椅子の高さと同じ位になり、工学的には合っています。

次に、車椅子(450mm)から便座へのトランスは水平移動の為同じ高さが望ましいのです。この事は一般に気付かない事ですし、見落とされがちです。

(参考 トランス)

では便器はどうするか。④高座面の車椅子対応便器(417mm)を使用する。⑤床の嵩上げをする。⑥便座の下に補高便座を取り付ける(高さ30mmタイプと50mmタイプ)。 ⑦便座の上にやわらか補高便座を置く(高さ30mm)。の四点での対応する事になります。因みに④で対応した場合、使用する便座の高さは(39mm)で変わりませんので、④417mm+39mm=⑧456mmとなります。

 

 

 

 

 

 

                    (参考 ⑤嵩上げ)                         

 

 

 

 

 

 

                 (参考 ⑦やわらか便座)


次に車椅子を使用する場合は通常クッションを併用します。身体状況によって様々なタイプの物がありますが、40mm~100mmと多様です。クッションは利用する人の体圧による沈み込みも考慮して、平均厚さを60mmとしましょう。
となると車椅子使用時の高さは最終的に、
床から③450mm(座面高)+60mm(クッション)=⑩510mmとなり、トランスは非常に楽になります。但し、クッションの厚み分は許容範囲となります。

では、高さ⑩510mmの車椅子の高さから便器・便座に無事にトランス出来たとしても、座位姿勢はどうでしょうか。便器・便座の高さは床から⑧456mmと高くなっており、座位姿勢は座面の高い椅子に座っていると同じ状態となり、踵(かかと)が床に付いていない状態となり、同居する家族等が使用した場合は便器・便座から立ち上がり辛くなります。
この事が私が日頃からお伝えしている「車椅子使用者にとってバリアフリーでも、同居する家族にとってはバリアになる。」と言う事になります。

この問題については、
脊髄損傷者の車椅子建築士が伝える「バリアフリー住宅の実情」⑥ トイレ編3と題して、
車椅子使用者のトイレ使用方法についてと併せてお話したいと思います。

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